好きなだけ時間をかけられたら……
こんばんは、結城浩です。
文章を書くことをいつも考えています。より正確にいうならば、考えていることをいつも文章にしようとしています。本を書くこともそうですし、こうやってあなたにメールを書いていることもそうです。
考えていることを文章という形にすることが好きですし、文章という形にしてさまざまなことを考えているともいえます。
何年か前に「好きなだけ時間をかけられたらどんな本を書くか」というご質問をいただいたことがありました。先ほど調べてみたところ、2015年8月25日の結城メルマガに書いた文章が見つかりましたから、六年も前のことですね。その文章は2018年5月17日に結城メルマガから切り出して同名のnoteとして公開しています。
そこで書いていた私の回答は「長い物語」と「心の物語」という二つでした。具体性はまったくないのですが、どちらにしても何か物語を書きたいと思っていた(思っている)ようです。
ところで先ほどふと気付いたのですが、私は「数学ガール」シリーズという形で数学物語を書いています。「数学ガール」シリーズが6冊。「数学ガールの秘密ノート」シリーズが14冊。今年の七月に刊行の(いませっせと初校ゲラを読んでいる)「数学ガールの物理ノート」シリーズが1冊。
もしもこの数学物語を「連作」と見なすならば、これはけっこう「長い物語」になっているといえるなあ……と、まあ、そんなことに気付いたのです。
そこから考えを進めてさらに思ったのは、もしも私が書いている文章すべてを「連作」と見なすならば、これはかなり「長い物語」といえるかもしれないということ。
数学物語や、プログラミングの本や、日々の日記や、メールや、ツイートや……それらすべてをすっぽりと包むような「枠物語」の構造を作るのは難しそうです。しかしながらそのすべてが「私」という一人の人を通過して出てきた言葉たちであることは間違いありません。ですから、全体を通じて流れている何かは存在しているかもしれませんね。
今日の私は、そんなことを考えています。
「好きなだけ時間をかけられたら何をしますか」と問われたら、あなたは何と答えるでしょうね。
それでは、また。