本を書く途中の気持ち

こんばんは、結城浩です。

『数学ガールの物理ノート/ニュートン力学』が無事に刊行され、ありがたいことに多くの人に楽しんでいただけているようです。「数学ガールの物理ノート」という新しいシリーズはよいスタートを切ったようです。深く感謝です!

最近の結城は「次の本」と「次の次の本」の準備を進めています。2021年に書く予定の3冊目と4冊目の本ですね。

「次の本」(今年3冊目)に関しては一応予定通りに進んでいて、8月末までには私の手から編集部に原稿が送られる手はずです。

「次の次の本」(今年4冊目)に関しては、ちょうど昨日、レビューをお願いしたい方々に案内メールを送付したところです。こちらは「数学ガールの秘密ノート」シリーズ第15作目となる予定です。

 * * *

一冊の本を書く途中では、気持ちがずいぶん変化します。書き始めは「あれも書きたい、これも入れたい」と大きく広がるような気持ちで作業が進みます。

でも、書き進むうちに自分の当初の見込みが楽観的すぎることに気付きます。分量的に無茶なことを考えていたと気付いたり、あるいは矛盾した方針を一冊に収めようと企てていたことに気付いたりするのです。

当然ながら、たくさんの判断が必要になります。思いついたアイディアのうちどれを採用してどれを没にするか。章の構成はいまのままで進むか思い切って変えるか。どれほどの範囲の話題を取り扱うか。

ですから、書き進めながら、何度も「いま書いている本は、いったいどんな本になるのだろう」と考えることになります。傍観者のように考えるわけではなくて、隠されている秘密を見つけ出そうと考えるのです。

結城はしばしばそのプロセスを「魔法の呪文を発見する」と表現します。「いま書いているのは、こういう本なのだ」と看破するまでのプロセスのことです。見つかるまではたいへん苦しいですけれど、見つかったときの喜びはひとしおです。

いったん「魔法の呪文」が見つかると、終盤戦に入ります。「いま書いているのは、こういう本なのだ」という発見にしたがって不要なものを削り、欠けているものを加える作業となります。

そして最後の段階では「ああ、確かにこの本はこうあるべきだ」という納得感へ着地します。

一冊の本を書くあいだでは、そんなふうに気持ちが変化します。

本を書くのは大変ですが、とてもおもしろい仕事といえますね。

それでは、またお便りします。